Story of Spice me

日本人が持つスパイスへの固定観念を変えたい。Spice meをはじめたワケ

世界のなかでも、家庭料理にスパイスが登場する機会がほとんどない日本の食文化。あなたが「スパイス」という響きからイメージするのは、どんなものでしょうか?

この記事では、Spice meの誕生秘話とこだわりについて、開発リーダーの長岡志織から想いをお伝えします。

「スパイスを普段の食に取り入れることで生まれる、新しい価値観や料理のバリエーションの豊かさを知ってほしい」

オーストラリアのスパイス専門問屋で商品開発に携わってきた彼女の実体験から、Spice meの価値を少しでも感じてもらえるとうれしいです。

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Profile:長岡志織
ワーキングホリデーをきっかけにオーストラリアへ。以降11年間滞在し、スパイスを取り扱う専門問屋で一流シェフたちの要望に応えたオリジナルスパイスの商品開発に携わる。その経験値を活かしSpice meの立ち上げ・サービスの中核を担っている。
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オーストラリアでワーキングホリデーをしていた頃、自宅で作る料理は日本食で、使う調味料といえば醤油と出汁とみりん。なんだかどの料理も似たような味になっちゃうな……と思っていました。

そんな日々からスパイスに出逢ったのは本当に偶然。ワーホリのビザが切れるタイミングで帰国するか、就職して残るかの瀬戸際だった頃に履歴書を配り歩いていて、たまたま「何してるの?」と声をかけてくれた配達のおじさんが誘ってくれたのが、ギリシャ系の家族が営むスパイスの会社だったんです。

最初はスパイスの面白さをよく知らないまま、工場の進行管理などを担当していました。それがだんだんと認められて、各地のシェフたちから寄せられるオーダーメイドスパイスの商品開発をさせてもらうように。「フォーミュラ」と呼ばれる、日本でいうところのスパイスミックスの調合に長く携わってきました。

とはいえ私自身、オーストラリアにいても自炊は日本食ばかりのスパイス初心者。だからこそ、まずは自分から周りのスタッフに「これって何に使うの?」「どう使うの?」と聞きながら自分で料理を作ってみて、スパイスに魅了されていったんです。

そもそもオーストラリアは移民の国。スパイス工場の仲間たちも多国籍で、いろいろな国の言語が飛び交っていたし、現地のスーパーは、エリアごとに置いてあるスパイスのバリエーションが違っているのも面白かったです。それだけ、いろんな食文化でスパイスが不可欠な存在であることを物語っていますよね。

一方で日本の食文化は、中華料理やタイ料理などのアジア圏の料理にはみんな親しみがあるけど、スパイスを使った料理で最初に連想するのはカレーだったり。スパイスといえば、ガラムマサラやクミン、ターメリックなどが思い浮かぶのではないでしょうか?

例えば、レバニーズ(レバノン料理)を食べたことがある日本人ってそんなに多くはないですよね。でも、オーストラリアのレバニーズレストランで初めて食べたときに「今まで食べたことない味だけど美味しい!!」って感動したんです。現地に遊びに来た弟も、日本人の友人も連れて行ったら同じことを言っていて。そういう、日本人の口に合うのに、まだ多くの人が出逢えていない「美味しさ」が世界には沢山あることを知ったんです。

そこで不可欠なのがスパイス。でも、スパイスに馴染みの薄い日本では、市販ではなかなか手に入らないスパイスが多いのも現状です。シェフの知人が日本にお店を出店するときには、「日本人はスパイスが苦手だからあまり使わないで」というオーダーを受けたと聞いたこともあります。
でもそれって日本人のスパイスに対する先入観や固定観念が強いだけ。食べてみたら美味しいものもあるのにもったいない……。

例えば、トルコ料理によく使われる「スマック」という、日本のシソみたいな風味のスパイスがあるのですが、これは日本のスパイス屋さんではなかなか手にはいらなくて。でも、日本人の味覚的にもこれをスパイスミックスに少し加えれば絶対美味しいのに!とか。

だからSpice meでは、私自身が日本人であるからこその実体験をもとに「これは日本では食べられない味だけど、きっと多くの日本人が好きなんじゃないかな?」というレシピを積極的にご提案しています。

スパイス単体じゃなく、ミールキットとしてお届けしているのにも理由があります。私自身がオーストラリアで「何に合うの?」「どうやって使うの?」と聞きながらスパイスの虜になっていったのと同じ体験をぜひしてほしいと思ったから。

レシピは、今の日本で気軽に調べられるスパイス料理だと、どうしても最後に醤油などで味を調整して「ジャパナイズ」されたものになってしまっているので、なるべく海外のレシピを参考に、料理の専門家の方と独自に開発しています。

毎回のお届けではスパイスの内容と説明を記載したコラムも同封しているので、回を重ねていく中でお気に入りのスパイスを見つけててもらえたら嬉しいです。

特に、新しい生活様式の中では自宅で料理をする機会も増え、毎日のレパートリーに悩む方も多いと聞きます。多種多様なスパイスとの出会いで、お料理と食卓の時間がもっと豊かで楽しいものになれば嬉しいです。